金曜日にトキワ街の空き店舗でひっそりと行われた『Shopping Street Story』を見に行きました。

いや、ひっそりと行われた公演かと思っていたら、、、直前に行っても当日券くらいなんとかなるだろうと思っていたら、20時からの1回目の公演は開場と同時に当日券が売り切れたそうで、思わず天を仰ぎました。天を仰ぐと、そこには日本一長いアーケードの屋根。

あきらめて車に乗って途中まで帰りかけましたが、このまま帰っても悔しくて寝れんわい、と思い直してUターン、22時からの2回目の公演にチャレンジしました。今度は当日券をゲットしました。しかしこの時間設定だというのに、会場は満席です。少々侮っていたようです。

半分閉まっているシャッターをくぐって細い階段を上がると30人分ほどの手作りの腰掛けと3畳くらいの舞台がありました。F’s Companyという長崎の劇団を率いる福田さんという方が、商店街のいろいろな店主にインタビューをして脚本を書き、それをもとに主に香川県在住の役者2~3人によって演じられる10分ほどの短い劇が8本。それを金土日に計8回行われる公演で3本ずつ上演するという企画でありました。

22時の回は、次の3つの店。高松の人ならたいてい知っている所ばかりです(なお、以下盛大にネタバレありです)

(1)「3びきのこぶた」
瓦町駅そばの癒やしのフルーツパーラー。良く言えばアクティブな、悪く言えば無節操な「お父さん」に振り回される一家の模様ですが、戦後すぐ、高松空襲で焼け野原になったであろうあのあたりに店を構えたというのは、大変な先見の明であったろうなと思います。今は瓦町フラッグのある場所には、空襲を生き延びた旧駅舎が以前は建っていて、高校時代の私なぞは毎日そこを通って通学したものでした。

(2)「どんぐり共和国」
高松でジブリグッズを手に入れるならここしかない、という感じの店ですが、なんともとは布団屋さんだったとは!時代の流れや新規参入店舗との戦いの中で、ダーウィン言うところの一番変化した奴が強いというのを地で行くような店だったのだそうです。店長さんの「商店街から飛び出てみたら、夜明るいネオンが窓にチラチラしていないと眠れなかった」というセリフにぐっときました。

(3)「メガネのタナカヤ」というか「♪タナカヤーのメガーネ」
演じられている女子会の風景、この回一番のリアリティーで、飲み屋の隣のテーブルを盗み聞きしている感じでした。
若くして店を継いで、子供のころからお世話になってきた店員ともに店を背負う女店長。メガネは掛けますが、店長を観察するという視点でメガネ屋に入ったことはない。しかし一番実物の店長に会ってみたいなと思いました。

ということで、商店街のお店の裏側をちょっと切り取って見せてくれるこの企画、町の歴史も感じ、老舗を受け継ぐことを自分の人生の目標として受け入れていくというビルトゥングスロマン的なところもあり、見る前と後ではだいぶ商店街そのものに対する感情(思い入れ度?)が変わってきます。演劇とは(と、まったくの素人の私が言うのもナンですが)このような、メディア的な使い方もあるんですねえ、という新発見。

他の話はどんなのだろうと後を引く感じもすごい。(都合により8回のうちこの回しか見ていない私が言うのもナンですが)
ぜひ今度第2弾があるときは、個人的には「あの」かぐわしい乾物屋さんの話と、今は商店街からは撤退してるかと思いますが、もともと兵庫町にあったナルホ堂(高校時代にずいぶんお世話になった)の話をよろしくたのんます。

あと、今回見た3作品はオールさぬき弁でした。すうっと話が入っていく中で、「3ぶた」の劇中で、店名が消去法で決められたということを知らされた娘が、なにそれー、信じらんなーい、となる場面があるのですが、ここだけがどうもノリにくい。私のさぬきの人としての感覚では、名前などはたいてい消去法で適当に決まり、こんなんしか思いつかんけどまあええか、と安易に受け入れられ、むしろそれが時間を経ることで一般名詞化していくことに価値を見出すかなと思うのです。

例えば、昔勤めていた志度高校の門前に菓子パンやジュースを売る店が昔あり、志度高生はずいぶんお世話になっていたものでした。その店の名は通称「むんちょ」。なにゆえに「むんちょ」なのかときどき話題になるけれど、まあ「むんちょ」やからええか、みたいなことにいつもなって話が終わる。それがおもしろい。

「3ぶた」の今一つノリにくい感じが、もし仮に「さぬきっぽくない価値観」という違和感であったとすれば、その違和感を突き詰めていくことで、他の土地柄とはちょっと違う「香川県民ならではのフィーリング」を抽出することができるのかもしれません。そして、それを一番抽出しやすいところにいると思われるのは演じている役者さん。なにしろセリフを舌頭千転して練習するわけですから、ドリッパーのお湯の中にいるようなものです(?)。役を演じるということは、もしかするとそういう可能性を秘めているのかもしれませんね。(と、まったくの素人の私が言うのもナンですが)

追伸 この駄文を書くに際してトキワ街をウィキペディアで見たところ、この町の起こりは演劇場ができたことなんだそうな。思いのほか意味深な公演なのかもしれませんね。

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