10月25日から29日にノトススタジオで上演されたサラダボール公演ロベルトズッコの感想。

1980年代に実在した連続殺人犯をモチーフにした、フランスの劇作家ベルナール=マリ・コルテスの現代劇です。

面白かったです。

殺人犯ロベルトズッコと彼を取り巻く様々な人が描かれているのですが、現代的な問題と神話的なモチーフが巧妙に織り交ぜられていて、現代劇でありながら古典劇を見ているような面白さがあります。

物語は父を殺したズッコが家に帰り母を殺し、彼のいうところの戦闘服である迷彩柄の服に着替えて出かけるところから始まります。
そしていろいろな人に出会います。家族に飼われている女の子、終電を逃して地下鉄に閉じ込められた老人、娼婦たち、物理的に満たされながらそれに嫌悪感をもつ主婦。

 比較的動きのあるシーンとズッコが出会った人と会話をする静かなシーンとが混在するのですが、静かなシーンが全体を一本の緊張感でつなげているように感じました。

 ズッコが会話をするシーンは主に椅子に座って出会った人と至近距離で語り合うのですが、これが、怖い。とりとめもない話をするのですが、ズッコが笑顔なんですね。これが怖いんです。もちろん殺人犯が何の罪もない人の横で笑っているんですから怖くないわけがないのですが、感情の焦点がわからない笑顔なんです。これは怖いでしょ。何だろ何だろ?と思いながら引き込まれていくわけです。

 ズッコが出会う人の中には彼にレイプされた上に好きになっちゃうという難儀な女の子が出てきます。この子の家族もかなりイカれていますが、この子も相当にクレージーです。とてもキュートです。そしてズッコに無償の愛を宣言します。

 二時間ドラマやなんかだったら、無償の愛にふれたりしちゃったら犯人はたいがい新しい人生を真っ当に生きようとしたりするのでしょうが、ズッコはこれを拒否します。

 他者にふれ、受け入れたり受け入れられたりすることで人はかろうじて生きていくのだと私は考えています。そうして人は成長していくのだと思うのですが、どうやらズッコは成長を拒否しているように見えます。どうして拒否するのか、それはわかるようなわからんような気がしますが、だから少女の愛を拒み、無自覚に成長する子供に怯えた挙句殺害し、(子供も殺してしまいます!!)老人には手出しができなかったのかもしれません。

 地上を横に移動すると人に出会います。だからズッコは上へ上へ高い塀を登って、ついに脱獄しようとしていた刑務所の塀から転落して死んでしまいます。

 何か完璧な世界を目指して飛んだのでしょう。ただし、この世界ではすべてのものが落下する。飛んでいる鳥さえも緩やかな落下をコントロールしているにすぎないと誰かが言ってたっけ。

 二時間弱の公演でしたがあっという間でした。久しぶりに集中が途切れることなく見続けることができました。90年間際に書かれた戯曲ですが、「おお、このモンダイはまだ全然生きてたのね~」ということを思い出してみたり。(突然「透明な存在」なんて言葉を殺人犯が言い出してみんなが右往左往したこと、覚えてる?あれ、まだ生きてるよ。)私の感想はネタバレ満載になっちゃうから公演後にしか書けないのが残念なんだけど、迷子になりながら観に行ってよかった~。(ノトス、結構行ってるんだけど迷子にならなかったことがない!)

 この後シアターデザインカンパニーの企画で近くの店で感想を語り合う会をしたんだけど、これも面白かったです。ありがとー。機会があったらレポート書きます~。